このテキストでは、「当て字」と「熟字訓」の具体的な区別を解説します。
漢字を通常と異なる方法で使用することを「当て字」と呼びます。
一方で、「熟字訓(じゅくじくん)」は、複数の漢字が組み合わさり一つの意味を表す場合に、その組み合わせを訓読みすることです。たとえば、「五月雨(さみだれ)」「大人(おとな)」「昨日(きのう)」が該当します。
具体的な違いとは?
熟字訓は、広義の当て字に含まれます。
当て字は、漢字が持つ本来の意味や読みを超えて使われる場合を指します。漢字には固有の読み方や意味があり、通常これらは一致していますが、必ずしもそうではないこともあります。
当て字は大きく分けて「①音を重視したタイプ」と「②意味を重視したタイプ」の二つがありますが、熟字訓は後者、「②意味を重視した当て字」として分類されます。
以下、それぞれのタイプについて説明します。
①音を重視した当て字
このタイプでは、「夜露死苦(よろしく)」や「倫敦(ロンドン)」などが例として挙げられます。また、「目出度(めでたい)」、「欧羅巴(ヨーロッパ)」、「海老(えび)」などがあります。
ここで重要なのは、漢字の意味を無視して音だけを利用している点です。例えば、「夜露死苦(よろしく)」は文字通り読むことができ、「倫敦(ロンドン)」をそのまま読むと「りんとん」となりますが、この読みは音の響きから選ばれています。
このように、「①音を重視した当て字」では、音の響きだけを利用して割り当てられた読みが特徴です。
②意味を重視した当て字(熟字訓の説明)
この区分の当て字では、漢字の通常の読み方を採用せず、その意味から読みを決定します。これが熟字訓の特徴です。
典型的な例には、「氷菓子(アイスクリーム)」や「運命(さだめ)」が挙げられます。
さらに、二文字の熟字訓の例としては「七夕(たなばた)」、「田舎(いなか)」、「小豆(あずき)」、「果実(くだもの)」、「紅葉(もみじ)」、「浴衣(ゆかた)」、「土産(みやげ)」などがあります。
三文字での例では、「二十歳(はたち)」、「紫陽花(あじさい)」、「無花果(いちじく)」があります。
これらの読みは、漢字それぞれの持つ意味に基づくため、熟字訓とされています。
また、「女」を「ひと」と読む場合もありますが、これは漢字の意味に基づく当て字ですが、熟字訓には分類されません。
一般的に、熟字訓は複数の漢字が結合して成立する表現を指します。単一の漢字の場合、それが当て字であっても熟字訓ではないとされています。
熟字訓は広く認知されている読み方に限られます。
個人が独自に考案した読み方が広く認知されていなければ、それは熟字訓とは見なされません。
この理解により、当て字と熟字訓の違いが明確になります。
まとめ
以上より、熟字訓は当て字の一形態であり、漢字の意味に基づいた読み方が特徴です。これにより、それぞれの漢字の本来の読み方とは異なる訓読みが用いられています。熟字訓は意味を重視した当て字の一例で、音を重視するタイプとは区別されます。