普段の会話や職場で、「騙し騙し使う」「騙し騙し進める」といった表現を耳にすることがあります。しかし、何となく意味は分かっていても、「ビジネスシーンで使って問題ないのか」「どのようなニュアンスを持つ言葉なのか」を正確に理解している人は意外と少ないかもしれません。
「騙し騙し」は、不具合や問題を抱えながらも、工夫や応急処置によって何とか状況を維持している様子を表す言葉です。一方で、使う相手や場面によってはネガティブな印象を与えることもあるため注意が必要です。
この記事では、「騙し騙し」の意味や使い方、ビジネスシーンでの注意点、言い換え表現や英語表現について分かりやすく解説します。
「騙し騙し」とは?
基本的な意味
「騙し騙し」とは、問題や不具合を根本的に解決しないまま、工夫や応急的な対応を重ねながら何とか維持・継続する様子を表す言葉です。
小学館『デジタル大辞泉』では、「騙し騙し」を
「その場を何とか取り繕いながら。ようすを見ながら。」
と説明しています。
また、同辞典では用例として
「中古のパソコンを騙し騙し使う」
が掲載されています。
この定義からも分かるように、「騙し騙し」は単に問題を放置するという意味ではありません。不具合や課題を抱えながらも、その都度調整や工夫を加えながら状況を維持していく様子を表しています。
例えば、
- 古いパソコンを修理しながら使い続ける
- 人員不足の中で業務を回す
- 不調な設備をメンテナンスしながら運用する
といった場面で使われることが多い表現です。
もともとの「騙す」には「ごまかす」という意味がありますが、「騙し騙し」という形になると、自分自身や状況をうまくコントロールしながら少しずつ進めるというニュアンスが強くなります。
そのため、日常会話ではネガティブな意味だけでなく、「工夫しながら何とか乗り切る」「限られた条件の中でやりくりする」といった前向きな意味合いで使われることも少なくありません。
【参考】
コトバンク「デジタル大辞泉『騙し騙し』」
「騙し騙し」が使われる場面
「騙し騙し」は、主に次のような状況で使われます。
- 古い設備や機器を使い続けている場合
- 人手や予算が不足している場合
- 体調不良を抱えながら生活している場合
- プロジェクトや業務に課題がある場合
- 一時的な対処で状況を維持している場合
単に「問題がある」という意味ではなく、「工夫しながら何とかやっている」というニュアンスが含まれるのが特徴です。
良い意味・悪い意味の両方がある表現
「騙し騙し」はネガティブな意味だけで使われる言葉ではありません。
例えば、
「古い設備を騙し騙し使っている」
という場合は、設備の老朽化という課題を表しています。
一方で、
「限られた予算の中で騙し騙し運営してきた」
という場合は、工夫や努力によって状況を維持してきたという前向きな評価にもつながります。
ただし、「問題を放置している」「その場しのぎで対応している」と受け取られる場合もあるため、ビジネスシーンでは使い方に注意が必要です。
「騙し騙し」の例文
日常会話での例文
日常生活では、設備や体調などに対して使われることが多くあります。
例文
- このスマートフォン、騙し騙し使っているけれど、そろそろ買い替え時かな。
- エアコンが故障気味なので、騙し騙し使っている。
- 腰痛を騙し騙し付き合いながら仕事を続けている。
- 古い自転車を騙し騙し乗っている。
どれも「完全な状態ではないものの、何とか使い続けている」という共通した意味があります。
仕事での例文
ビジネスシーンでは、業務や設備、組織運営などに対して使われます。
例文
- 人員不足の中、騙し騙し業務を回している。
- 現行システムを騙し騙し運用している状態だ。
- 予算が限られているため、既存設備を騙し騙し活用している。
- スケジュールの遅れを調整しながら、騙し騙しプロジェクトを進めている。
ただし、社外向けの正式な場面では別の表現に置き換えた方が無難なケースもあります。
ビジネスで「騙し騙し」を使う際の注意点
社内では比較的使いやすい
社内会議やチーム内のコミュニケーションでは、「騙し騙し」は現状を分かりやすく共有できる表現として使われています。
例えば、
「このシステムは騙し騙し運用している状況です」
と伝えれば、根本的な改善が必要であることを簡潔に共有できます。
ただし、課題の共有だけで終わらせず、
「改善計画も並行して進めています」
などの補足を添えると、より建設的な印象になります。
取引先や顧客には避けた方がよい
社外の相手に対して「騙し騙し」という表現を使うと、
- 品質管理が不十分
- 問題を放置している
- 信頼性に欠ける
と受け取られる可能性があります。
例えば、
「騙し騙し運用しています」
という表現よりも、
- 暫定的に対応しています
- 応急的な措置を講じています
- 改善を進めながら運用しています
などの表現の方が適切です。
なぜネガティブに受け取られることがあるのか
「騙し騙し」には本来、
「問題を抱えながら何とか維持している」
という意味があります。
そのため、相手によっては、
「根本的な解決ができていない」
「その場しのぎの対応をしている」
という印象を持つ場合があります。
特に品質や安全性が重視される業界では、安易な使用を避けた方がよいでしょう。
ビジネスで使用する場合は、課題だけでなく改善への取り組みもあわせて伝えることが大切です。
「騙し騙し」の言い換え表現
「騙し騙し」は便利な表現ですが、ビジネスシーンによってはカジュアルすぎたり、ネガティブな印象を与えたりすることがあります。そのような場合は、状況に応じて別の表現へ言い換えるとよいでしょう。
工夫しながら進める
課題や制約がある中でも前向きに取り組んでいることを伝えたい場合に適した表現です。
例文
- 限られた予算の中で工夫しながら進めています。
- 現状の環境を活用しながら業務を進めています。
「騙し騙し」よりも前向きな印象を与えやすい表現です。
応急的に対応する
一時的な対策で問題を回避している状況を表現できます。
例文
- 現在は応急的な対応を行っています。
- 恒久対策が完了するまで応急措置を実施しています。
トラブル対応や設備不具合の報告でよく使われます。
暫定的に運用する
正式な解決策が整うまでの運用方法を示す際に適しています。
例文
- 新システム導入まで暫定的な運用を継続します。
- 当面は暫定対応にて進めます。
社外向けの説明でも使いやすい表現です。
やりくりする
人員や予算などが不足している状況を柔らかく表現できます。
例文
- 限られた人員でやりくりしています。
- 現有リソースを活用しながらやりくりしています。
試行錯誤しながら進める
課題解決に向けて改善を重ねていることを強調できます。
例文
- 試行錯誤しながら最適な方法を模索しています。
- チームで試行錯誤を重ねながら進めています。
改善活動や新規プロジェクトとの相性が良い表現です。
ビジネスシーン別の使い方
人手不足の場合
人員不足が続いている職場では、「騙し騙し」が現状を表す言葉として使われることがあります。
例文
- 人員不足の状況が続いていますが、騙し騙し業務を回しています。
- 繁忙期は騙し騙し対応してきましたが、増員を検討しています。
ただし、経営層や顧客への報告では「限られたリソースの中で対応しています」と言い換える方が適切な場合があります。
老朽化した設備の場合
「騙し騙し」が最もよく使われる場面の一つです。
例文
- この設備は騙し騙し使っていますが、更新時期が近づいています。
- 修理を繰り返しながら騙し騙し運用しています。
単なる不満ではなく、設備更新の必要性を伝える文脈で使われることが多くあります。
トラブル対応の場合
予期せぬ障害や不具合が発生した際にも使われます。
例文
- システム障害発生後は騙し騙し運用していました。
- 応急処置によって騙し騙し稼働を続けていました。
ただし、正式な報告書では「暫定対応」「応急対応」などへの置き換えが望ましいでしょう。
プロジェクト進行の場合
計画どおりに進まないプロジェクトでも使われます。
例文
- スケジュールを調整しながら騙し騙し進めてきました。
- 課題を一つずつ解決しながら騙し騙し進行しています。
ただし、マネジメント層への説明では「リスク管理を行いながら進行している」と表現した方が前向きな印象になります。
「騙し騙し」の英語表現
日本語の「騙し騙し」に完全に一致する英語表現はありませんが、状況によって近い意味を持つフレーズがあります。
Make do
「あるもので何とかやりくりする」という意味です。
例文
We don’t have enough resources, but we’ll make do for now.
(十分なリソースはありませんが、当面は何とか対応します。)
Patch things up
「応急的に修復する」「その場をしのぐ」という意味です。
例文
We’ve patched things up until a permanent solution is ready.
(恒久的な解決策が整うまで応急的に対応しています。)
Keep it together
困難な状況の中で持ちこたえることを表します。
例文
We managed to keep it together despite the challenges.
(困難がありましたが、何とか持ちこたえることができました。)
Trial and error
「試行錯誤」を意味する表現です。
例文
We’re still using trial and error to improve the process.
(現在も試行錯誤しながら改善を進めています。)
Limp along
「何とか持ちこたえる」「不完全な状態で続ける」という意味で、「騙し騙し」のニュアンスに比較的近い表現です。
例文
The old system has been limping along for years.
(古いシステムは何年も騙し騙し使われています。)
よくある質問(FAQ)
「騙し騙し」は失礼な表現ですか?
失礼な言葉ではありませんが、取引先や顧客とのやり取りでは避けた方が無難です。課題を放置している印象を与える場合があります。
「騙し騙し」の類語は何ですか?
主な類語として、
- やりくりする
- 応急対応する
- 試行錯誤する
- 工夫しながら進める
- 暫定的に運用する
などがあります。
ビジネスメールでも使えますか?
社内メールであれば問題ないケースもありますが、社外向けメールでは避けた方がよいでしょう。
ポジティブな意味で使われることはありますか?
あります。
「限られた環境の中で工夫して対応する」という意味で使われる場合は、努力や柔軟性を評価するニュアンスを含むことがあります。
まとめ
「騙し騙し」とは、問題や不具合を抱えながらも、工夫や応急対応によって何とか維持・継続している状態を表す言葉です。
日常会話では広く使われていますが、ビジネスシーンでは相手や状況に応じて使い分けることが重要です。特に取引先や顧客とのやり取りでは、「暫定対応」「応急対応」「工夫しながら進める」といった表現へ言い換えた方が適切な場合があります。
言葉のニュアンスを正しく理解し、状況に応じて使い分けることで、より円滑なコミュニケーションにつながるでしょう。

